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いきなり謝罪の言葉を口にする孝一。
私は黙って下を向く。
できるなら、その先の言葉は聞きたくなかった。
だけど孝一の言葉は続く。
「一昨日の夜は留美のところに泊まったんだ」
「……」
「本当に沙織には申し訳ないんだけど……別れてくれないか?」
「……」
「もちろん、それなりの償いはするつもりだよ。沙織が新しい部屋を探すなら、引っ越し代とかいろいろ……」
もうちょっとで泣き崩れてしまいそうだった。
感情の爆発を理性が止めるぎりぎりのところだった。
いやよ――!
そんなの無理!
別れたくない!
お願い、考え直して!
悪いところは直すから、私と別れないで!
そんな言葉と共に恥も外聞もなく、プライドも捨てて追いすがってしまいそうだった。
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