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「ほんと?」
「ほんと。僕は留美に夢中だよ。自分でも戸惑うくらい」
嘘――。
と、私は思う。
ちゃんと冷静な部分を残してるくせに。
沙織と私のどちらを選ぶか、理性で冷静に判断しようとしてるくせに。
孝一はまだ夢中になんかなっていない。
我を忘れるくらい私に夢中になって欲しいのに……。
長期戦になってしまえば、付き合いの長い沙織が有利。
交際の歴史が長い分だけ、思い出や情があるから。
今日、私はどんな手を使っても、朝まで孝一と一緒にいるつもりだった。
そのために私は、睡眠薬を手に入れたのだ。
数日前に近くの病院へ行き「寝つきが悪い」と訴えたところ、医者は睡眠導入剤を簡単に処方してくれた。
薬の効果は自分の身体で実験済み。
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