留美の焦り

7/14
前へ
/33ページ
次へ
「ほんと?」 「ほんと。僕は留美に夢中だよ。自分でも戸惑うくらい」 嘘――。 と、私は思う。 ちゃんと冷静な部分を残してるくせに。 沙織と私のどちらを選ぶか、理性で冷静に判断しようとしてるくせに。 孝一はまだ夢中になんかなっていない。 我を忘れるくらい私に夢中になって欲しいのに……。 長期戦になってしまえば、付き合いの長い沙織が有利。 交際の歴史が長い分だけ、思い出や情があるから。 今日、私はどんな手を使っても、朝まで孝一と一緒にいるつもりだった。 そのために私は、睡眠薬を手に入れたのだ。 数日前に近くの病院へ行き「寝つきが悪い」と訴えたところ、医者は睡眠導入剤を簡単に処方してくれた。 薬の効果は自分の身体で実験済み。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

213人が本棚に入れています
本棚に追加