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「大丈夫よ。あ、お昼はサンドイッチでいい? それしか作ってないから、足りなければ何か買っていこうかと……」
「サンドイッチがあれば充分よ。ケーキとおせんべい持ってきたし」
「ありがとう」
私たちは沙織のアパートへ向かって歩き出した。
駅からアパートまでは徒歩10分ほど。
細い川が流れる橋を渡ったり、緑の多い公園の脇を通ったり、自然に恵まれた場所だった。
「住み良さそうな町ね。落ち着く感じ」
「前に住んでた場所から一駅しか離れてないの。前の場所も気に入ってたし、不慣れな土地には住みたくないしね」
「そうよねぇ」
「まぁ私の生活力じゃ都心に住めない、っていうのもあるけど」
話しながら歩いているうちにアパートへ着いた。
沙織に案内されるまま、部屋の中に入っていく。
静かな部屋だった。
女性にしては殺風景とも言えるシンプルな部屋――。
沙織の孤独が想像でき、その孤独が数ヶ月前の自分と重なった。
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