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「負けって……。恋愛は勝ち負けなの? それは違うと思う」
「でもね、魅力のないことが欠点になるの。恋愛では」
「……」
「孝一にとって、私は魅力を感じない存在になったんだもの。それが私の欠点だと思えば別れるしかないわ」
そこまで言ったあと、沙織は疲れたように「ふぅ」と息を吐いて紅茶を飲む。
「それなら私も同じね」
「違うわ。遥子は松岡先生にとって魅力的な女性よ」
「ううん、そうじゃなくて夫から見ての私」
「……」
「今まで一方的に夫が悪いと決め付けてたわ。結婚したのに愛の冷めた夫が悪いと思い込んでた。だけど沙織の理屈だと私の欠点なのね」
口にすると、なぜかスッキリした気がした。
相手を許して自分の方が悪かったと認めてしまえば、こんなにも楽になるのか……。
そんな思いだった。
沙織はじっと私を見つめて静かに言う。
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