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じめじめとした鬱陶しい梅雨が始まろうとしていた。
このぐずぐずとした天気は、まるで私の心みたい――。
定時に仕事を終えて外に出た私は、夕方の空を見て思った。
傘を差すべきが迷うくらいの小雨。
私はそのまま傘を差さずに歩き出す。
帰宅途中でスーパーに寄り、夕食の材料を買うつもりだった。
が、スーパーの中に入った途端、タイミングを見計らったように孝一からメールが届く。
――今日はそっちに寄れないと思う。
今日も仕事は遅くなりそうだし、疲れがたまってて。
留美に会いたいけど、今は1分でも多く眠りたいのが本音。
だから真っ直ぐ帰ります。
それから明日と明後日も寄れないと思う。
ごめんね。
週末にはゆっくり会おう。
読み終えて携帯を閉じ、何も買わずにスーパーを出た。
孝一と一緒に夕食を食べられる……と思ったからこその買い物。
今日はその必要がなくなった。
自分の分だけなら作る気がしない。
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