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夕食を作る気にならないので、何か食べて帰ろうと思った。
私は最寄り駅のカフェに立ち寄る。
あまり食欲がないので、コーヒーとクロワッサンとサラダで充分だった。
窓際の席に付き、温かいコーヒーを飲む。
ブラックコーヒーの苦味と共に、孝一とのやりとりが甦ってきた。
三月に話し合った時の会話だ。
「同棲したくないのは、沙織のことが引っかかってるから?」
「それもあるし。一緒に住んじゃうと別れる時が辛いよ」
「私たち、いつか別れるの? 孝一さんはそのつもりなの?」
「いや違う。別れるつもりで付き合ったりなんかしない。だけど、先のことは誰にも分からないから」
「私は……結婚したいと思ってる。孝一さんとずっと一緒にいたいから」
「……」
「私じゃダメなの? 結婚相手には考えられない?」
「そんなことはないよ。だけど今は沙織と別れて留美と付き合い始めたばかりだし。今すぐ結婚は考えられないよ。仕事だって今が一番大変な時期だし」
そんなふうに言われ、私はもう何も言えなかった。
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