沙織の涙

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「じゃあ、ここを出たらランチしよう。何でも奢るよ」 「ありがとうございます」 「寿司でも天ぷらでも、何でもいいからね」 「はい……」 お礼を言いながらも、私は本題の方が気になって仕方ない。 お寿司も天ぷらもどうでもいいから、早く結果を聞かせて欲しかった。 結果というのは―― 私は松岡先生に頼まれた企画書を、約二週間前に渡していた。 2時間のサスペンスドラマで、美人弁護士が主人公の人気シリーズものだ。 私に企画書を頼んできた時、松岡先生は言った。 『ちょうど今、僕は凄く忙しくてね。もし企画書が採用されたら、シナリオも沙織ちゃんが書けるようにするから。局のプロデューサーにも話すから』 『もしかしたら僕と共作になるかもしれないけど、必ず書けるようにはするよ』 私はその言葉に期待した。 やっとやっと私にも幸運が巡ってきたと涙したのだ。
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