沙織の涙

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「それで、例の企画書だけど……」 運ばれてきたコーヒーにたっぷりのミルクを入れながら、松岡先生は話を切り出した。 私は「はい」と答えながら、緊張で身体が固くなる。 「いい話だ、って局のプロデューサーも褒めてたよ」 「ほんとですか?!」 私は安堵と喜びで胸がいっぱいになった。 今回の企画書はシリーズもののため、主な登場人物は決まっている。 なので、私がキャラクター作りで苦心したのは、犯人を中心とした一部の人物のみ。 企画書に書くべき登場人物の紹介部分は楽な方だったが、プロット作りはとても苦労した。 恋愛ドラマやホームドラマなら、慣れもあってストーリーは浮かびやすい。 だが私にとってサスペンスは難しかった。 出来上がった企画書にも自信がなかった。 今日この場へ来るまでは、松岡先生に怒られることも覚悟していたのだ。
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