遥子の決意

12/27
前へ
/27ページ
次へ
善は急げとばかりに、自分でも驚くほどの行動力だった。 派遣登録した二日後には、沙織が働いている会社の面接も受けた。 結果は採用。 来週の月曜日からの出勤が決まった。 いよいよ夫に離婚を切り出す時が来た。 派遣といえども勤め先は確保した。 引っ越し先についても当てがある。 もうためらう理由はなかった。 採用と初出勤日が決まった夜、私は昂る気持ちを抑えながら夫の帰りを待っていた。 夜遅く帰宅した夫を玄関先で迎えながら、「話があるの」と切り出した。 夫は無愛想な顔で私をじろりと一瞥する。 「こっちは疲れてるんだ。またにしてくれよ」 「またって、いつも遅いじゃない? 土日だってほとんどいないし」 「じゃあ用件だけ言ってくれ。手短に」 殺伐とした会話。 今はもう慣れてしまったけれど、長い間どれだけ悲しんできたことか。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

274人が本棚に入れています
本棚に追加