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善は急げとばかりに、自分でも驚くほどの行動力だった。
派遣登録した二日後には、沙織が働いている会社の面接も受けた。
結果は採用。
来週の月曜日からの出勤が決まった。
いよいよ夫に離婚を切り出す時が来た。
派遣といえども勤め先は確保した。
引っ越し先についても当てがある。
もうためらう理由はなかった。
採用と初出勤日が決まった夜、私は昂る気持ちを抑えながら夫の帰りを待っていた。
夜遅く帰宅した夫を玄関先で迎えながら、「話があるの」と切り出した。
夫は無愛想な顔で私をじろりと一瞥する。
「こっちは疲れてるんだ。またにしてくれよ」
「またって、いつも遅いじゃない? 土日だってほとんどいないし」
「じゃあ用件だけ言ってくれ。手短に」
殺伐とした会話。
今はもう慣れてしまったけれど、長い間どれだけ悲しんできたことか。
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