遥子の決意

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新しい人生に向けて進むんだ――。 そんな昂った気持ちは、10日もしないうちに打ちのめされていく。 次々と届く不採用通知と送り返される履歴書。 不況だから厳しいのは予想していた。 新卒者でさえ就職が決まりにくい、というニュースも耳にする。 だけどそれは、ある程度大きな企業を狙った場合だと思っていた。 私が応募したのは、名前も知らなかった中小企業ばかり。 それでも就職情報誌に載っているぐらいだから、人材を募集しているのは確かだ。 だが私は、そこからも拒否されてしまうのか? 私はどんな会社からも必要とされない人間なのか? “無能”の烙印を押されたようで、気持ちが滅入る。 自分を優秀だと思ったことはないが、普通の事務ぐらいなら出来ると考えていた。 ギリギリだけど、まだ20代。 二流だけど大学卒。 履歴書は丁寧な字で心を込めて書いたし、貼付した写真だって不細工ではない。
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