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女心と秋の空じゃなくて、男心と秋の空だわ……。
私は心の中で苦々しく呟いていた。
喫茶店の大きな窓から見える秋の空は、どんよりと雲って今にも雨が降り出しそう。
きっと一時間もしないうちに外は雨になるだろう。
約束の時間になってもまだ現れない孝一を待ちながら、私はぼんやりと窓の外を見ていた。
孝一から「話がある」と三日前に電話で言われ、今日会う約束をしてここに来た。
私のマンションから歩いて五分ほどの場所にある喫茶店。
ここまで来てくれながらも、私の部屋に来ることは拒む孝一。
話の内容は別れ話に違いない……。
今日に限らず最近ずっと、孝一は私のマンションへは来てくれなかった。
会社以外で顔を合わせることすらなかった。
この二週間、私のことを避けているようで。
このままではまずい、何とかしなければ……と考えていたところに、孝一から電話があった。
それが三日前――。
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