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「話があるんだ。今度の土曜日に会ってもらえる?」
「嬉しいわ。じゃあ、うちに来る?」
私は甘えた声を出して、はしゃいでみせた。
孝一の冷めた心に気づかないフリで。
「ごめん……。マンションにはもう行くつもりないんだ。だけど遠くに来てもらうのは悪いから、あの喫茶店にしよう。留美のマンションの近くの……」
孝一はそう言って、ここの場所を指定したのだ。
約束の時間は午後2時。
その時の電話で、孝一の本心がはっきりと伝わってきた。
本気で別れるつもりなんだと――。
私の部屋ではなく喫茶店を選んだのもそのため。
部屋で話して泣かれたり粘られたりが嫌なのだろう。
午後2時という時間帯も別れ話には最適なのかもしれない。
一緒に食事をする必要もないし、もちろんお酒の出番もない。
お酒の力を借りて甘えたり泣いたりして、別れ話をチャラにすることも無理だ。
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