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午後2時の喫茶店じゃ、孝一に抱きつくことだって出来ない。
今日のところは、孝一の言い分を聞いて話し合う以外できそうになかった。
「ごめん、遅れて」
孝一の声が私の耳に飛び込んできた。
窓の外から視線を向けると、申し訳なさそうな孝一の顔。
走って来たのだろう。
孝一の息が少し荒い。
「まだ5分しか過ぎてないわ」
私が努めて優しい声で言うと、孝一は「でも、ごめん」と謝りながら、正面の席に腰を下ろした。
ウエイトレスが近づいてきて、私たちはアイスコーヒーを頼む。
コーヒーが運ばれてくるまで、孝一は水ばかり飲んでいた。
「孝一さんの話って何かしら?」
私はなるべく無邪気さを装って尋ねた。
別れ話などこれっぽちも想像していない、という顔で。
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