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「その同僚の女の子は何て言ってきたの?」
「留美と別れるな、って。留美がどれほど素晴らしい人間で、どれほど僕を思っているかを綿々と訴えてくる」
「そんな……。ちょっとお節介過ぎない? 他人の恋愛に口出しするなんて」
「そうだよな」
「留美がその女の子に頼んでるの?」
「それは違う。その子が勝手にやってることなんだ。留美は知らないと思う」
「それなら余計にお節介よ。大きなお世話だと思う」
私の声は自然と荒くなる。
「僕もそう思うんだけどさ、社内の女性を敵に回したら恐いよ」
孝一は“参った”という顔で空を仰いだ。
「でも知られてるのは、その子だけでしょ?」
「わからない。僕の知らないところで噂がどんどん広まる可能性もあるし」
いったん仰いだ頭を落とし、うな垂れる孝一。
私は気の利いた慰めの言葉も出てこない。
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