293人が本棚に入れています
本棚に追加
私が黙っていると、孝一は自嘲するように言う。
「僕の憂鬱はそんなとこ。つまらない話を聞かせて申し訳ない」
「ううん……」
――お願い。誰が何を言ってきても、留美とは別れて!
叫びたかったけれど、その言葉は飲み込んだ。
「沙織は最近どう? シナリオの方とか」
「私は特に変化なし」
「企画書は続けてるんでしょ?」
「とりあえず今、抱えてる物は無いわ。最近、依頼されてないし」
「そうか……」
孝一が心配そうな顔で私を見つめる。
「でもまぁ、あれよ。依頼されてなくても自分から持ち込むことはできるから。『面白そうなモノが出来たら、いつでも持ってきて』って言われてるから」
「制作会社に?」
「そう。馴染みのプロデューサーとか、脚本家の先生にもね」
最初のコメントを投稿しよう!