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今はこの幸せに浸っていよう。
留美のことは、孝一が話したい時に話せばいい。
箱根に着くまでの会話は、他愛もない世間話だった。
窓から見える風景や、車内に流れる音楽の感想を言ったり。
最近の仕事のことを話したり。
留美のことは一切話題に出なかった。
「お昼、どこで食べようか? 沙織は何が食べたい?」
「あ、実はお弁当作ってきちゃった」
「ほんと?!」
私は照れながら「うん」と答える。
「珍しいね。家事嫌いの沙織がお弁当なんて」
「私だって驚いたわ。孝一がレンタカーを借りてドライブしたくなるなんて」
「まぁ何ていうか……そんな気持ちになったからさ」
「私も同じよ。作ってみたくなったの」
私たちは顔を見合わせて微笑み合う。
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