274人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「沙織の方からラジオ局に電話してみたら?」
「とんでもない。そんな図々しいこと、できないわ」
「図々しいかなぁ? 電話で尋ねるくらい普通だと思うけど。だって『連絡する』って言ったのに、してこないんだもの」
沙織は困ったように視線を落とす。
「正式な発表がもうすぐだから。その日を大人しく待ってるわ」
「そっか。もうすぐだもんね。私も良い結果を祈ってる」
「ほとんど諦めてるけどね。連絡来ないから」
沙織の肩は震えていて、再び泣き出しそうに見えた。
私は沙織の前に3本目の缶チューハイを置き、励ますように言う。
「飲もう。今夜はとことん!」
沙織は2本目の残りを飲み干し、3本目のプルトップを開けた。
「ピザも焼くね。眠くなるまで飲んで食べよう」
私は立ち上がって冷凍のピザを焼きにキッチンへ向う。
沙織の正面から離れてピザの用意をしている時、ふっと豪ちゃんの顔が浮かんできて、やっぱりどうしようもなく泣きたい気分になった。
最初のコメントを投稿しよう!