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「だめだわ、私。今は何もかも悪い状況だから、言葉が刺々しくなっちゃう。一緒にいる遥子にヤツ当たりしちゃう」
沙織に素直に謝られ、私もバツが悪くなる。
「それは私も同じだから。沙織に意地悪なこと言ったりして」
私たちは目を合わせ、お互い力なく笑う。
涙こそ止まっていたけれど、辛い気持ちに変わりはなかった。
「何もかも辛い状況って言ったけど、シナリオは順調そのものじゃない? ラジオドラマのコンクールだって良い結果だったし」
傷つけた罪滅ぼしのつもりで私が明るい話題を振ると、沙織は悲しげに目を伏せる。
「そっちも苛立ちの原因の一つよ。まったく、どうなってるのか……」
どういうことかと尋ねると、沙織は私に説明した。
「正式な賞の発表前に連絡する」と言った局の人から、何の連絡もないこと。
「一度、局に顔を出して欲しい」と言ってくれたのに、なしのつぶてな状況。
聞いていると、確かに沙織の現状は気の毒だと感じた。
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