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孝一の優しい言葉は、子供のことを一人で対処した私に対する、労いの気持ちだけかもしれないのに。
そんなふうに考えていた時、孝一がぽつりと言った。
「正直、僕はいま気持ちが混乱している」
私はじっと孝一の顔を見つめた。
「だから今はこれ以上、何も言えないけど……話してくれてありがとう」
孝一は深々と頭を下げた。
「孝一さん……。私のことは本当に忘れていいからね。じゃあ、もう行くからね」
頭を下げたままの孝一に向って伝え、私は再び立ち上がる。
孝一も今度は引き止めなかった――。
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