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本音を吐き出した後、孝一は溜息をついた。
近くにいなくても、その吐息が聞こえそうなほどの表情だった。
「この際だからハッキリ言うよ」
孝一がまっすぐに私を見つめ、私はごくりと息を飲み込む。
何を言われるのか、不安で心臓の鼓動が大きくなる。
「僕はヒステリックな人が苦手なんだ。激しい感情のまま、言葉をぶつける人とは付き合っていけない」
私は死刑宣告を受けた被告人のような気分だった。
さっきの孝一の言葉が再び脳裏をよぎる。
――僕は、留美のそういうところがダメなんだよ。
今夜に限らず孝一と付き合っていた間、私は何度か感情のまま、強い口調を孝一にぶつけたことがある。
そのたびに孝一は私に失望してきたのか。
失望が少しずつ積み重なり、ついには我慢できないほど溢れかえって、別れたくなったというのか。
「でも……」
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