246人が本棚に入れています
本棚に追加
言われっぱなしなのが悲しくて悔しくて、私は自分の本音を絞り出す。
「親しくなればなるほど、喧嘩だってするでしょう? お互い本音をぶつけ合えば、取り乱すこともあると思う。そうやって分かり合っていくんじゃないの? 恋人って、そういうものじゃないの?」
「留美の言ってることは正しいよ。そういう関係が多いのも分かってる。でも僕は僕だから。ダメなものはダメなんだ」
孝一は悲しそうに目を伏せた。
私もこれ以上は言葉を繋げることができない。
言うべき言葉も、どうしたら良いのかも、何も浮かばない。
しばらく沈黙のあと、私は悟ったように言った。
「分かったわ……。もう『添い寝して』なんて言わないから、安心して眠って。迷惑かけてごめんなさい」
私は自分のベッドに潜り込み、顔も半分以上を布団で覆って目を閉じる。
今はもう何も考えたくなかった。
自分の性格や存在を全否定された気がして、なす術もない。
ここまで嫌われて拒絶されてまで執着したいのかどうか、分からなくなっていた。
私が自分のベッドに入ったから安心したのか、孝一はソファーからゆっくり立ち上がり、そっと隣りのベッドへ入る音が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!