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一睡も出来ない長く苦しい夜だった。
好きな相手と同じ部屋にいるのに、別々のベッドで背を向け合って寝ている。
絶望感で心を塞がれながらも、私は眠れぬまま考え続けていた。
もう孝一の気持ちを取り戻すのは無理だろう。
ヨリを戻すことは諦めるしかない。
追っても縋っても責めても甘えても無理だと悟った。
可南子を使った作戦でも大きな効果は得られなかった。
今回の同じ部屋に泊まる作戦は、最終手段のようなもの。
これ以上は打つ手がない。
どんなに悲しくても悔しくても諦めるしかないのだ。
カーテンの隙間から射し込む光で、夜が明けていくのが分かった。
隣りのベッドを横目で見ると、相変わらず孝一は私に背を向けたまま。
孝一は眠れたのだろうか。
それとも私と同じように一睡もできなかったのだろうか。
孝一の身体がすっぽりと納まっている布団のかたまりを、私は見つめ続ける。
そのかたまりを見ていたら、納得できない思いが込み上げてきた。
このままじゃ、まるっきり私は愚か者で悪者だ。
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