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「僕は、留美のそういうところがダメなんだ」
なんて指摘されて、捨てられて。
悔しさと未練でぐちゃぐちゃの気持ちが昂ぶり、私はぎゅっと布団を掴んだ。
なんとか一矢報いたい。
ヨリを戻すのは無理だとしても、孝一の心に強烈な波紋を投げかけてやりたい。
と同時に、私のことを忘れられないよう心に残したい。
ダメな女として捨てられて、あっさりと忘れられるなんて、あまりにも私が惨め過ぎる。
そんなの冗談じゃない――!
どんどん明るさを増してくる夜明けの光の中で、私は一つの妙案を思いついた。
その案を頭の中でじっくり煮詰めていると、自然に口元はほころび、固く布団を握りしめていた手の力も抜けていた。
今は隣りのベッドで静かに寝ている孝一が、どんな反応を示すのかと思うと心が躍る。
私の絶望感は消え去り、孝一と言葉を交わせる時間が待ち遠しかった。
ベッドに備え付けの時計が7時を過ぎたのを確認し、私はゆっくりと立ち上がる。
カーテンは閉めたまま弱い灯りだけを付け、浴衣から衣服に着替え、洗顔と化粧も済ませた。
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