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「留美、もう起きたの?」
洗面所で髪をとかしていた私に向かって、孝一の声が飛んできた。
私が部屋に戻ると、孝一はベッドの上で上半身だけを起こしていた。
「おはよう。私の音で起こしちゃったかしら?」
「いや、もう起きた方が良い時間だし。具合はどう?」
「大丈夫。すっかり治ったみたい」
「安心したよ。ちゃんと眠れた?」
眠れるわけがない。
あんなことを言われて拒絶されて眠れる方がおかしい。
だが私は本音を隠して穏やかに言う。
「少しね。なかなか寝付けなかったけど、いつの間にか眠ってた。孝一さんは?」
「僕も同じだよ」
「良かった、孝一さんが眠れて……。昨日は本当にごめんなさい」
「僕の方こそ酷いことを言ってしまって」
孝一は申し訳なさそうな困惑の表情だ。
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