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「悪いのは私だから。あ、チェックアウトしたらラウンジでコーヒー飲んで帰らない? できれば軽く食べたいし」
私は明るさを装って言った。
「いいよ。僕も急いで出る支度するから待ってて」
「急がなくても大丈夫。チェックアウトまでは充分に時間があるから」
私たちは昨夜の険悪な言い争いなど無かったように、ごく普通に帰り支度を整え一緒に部屋を出た。
エレベーターの中で私は彼に告げる。
「孝一さんはラウンジで待ってて。フロントでチェックアウトしてくるから」
「わかった」
エレベーターから出ると、孝一はラウンジの方へと歩き出す。
私は同じ階のフロントに向かい、チェックアウトを済ませてラウンジへと進んだ。
これから実行する大芝居を想像すると、興奮でぞくぞくしてくる。
その瞬間の孝一の顔が見たくてたまらない。
ここまで執着する自分に半ば呆れながらも、私はそれだけ孝一が好きなのだと思った。
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