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一番奥の窓際の席に孝一は座っていた。
窓から降りそそぐ眩い朝の光は、爽やかな一日の始まりを告げている。
自分がこれから行おうとしている芝居は、この朝のラウンジには不似合い過ぎる。
それでも私は実行を止める気にはなれなかった。
「お待たせ」
穏やかな表情を作りながら、私は孝一の正面に座る。
オーダーを聞きに来たスタッフに、クロワッサンとベーコンエッグがセットになった朝食を私たちは注文した。
焼きたてのクロワッサンと熱々のベーコンエッグを食べる間、私たちは静かでほとんど会話がなかった。
「留美はまっすぐ帰るよね?」
孝一に聞かれて頷く私。
「身体の方はもう大丈夫? 一人でも平気?」
「ええ。迷惑かけちゃって本当にごめんなさい」
「いいんだよ。僕はちょっと、この辺をブラブラしようかな。留美はここを出たら一人で帰れるよね?」
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