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私は一瞬、言葉に詰まる。
途中駅までは同じ電車で帰れると思っていた。
孝一はそんなに早く私から離れたいのか。
苦々しい思いが顔に出ないように気を配り、私は落ち着いて答える。
「一人で大丈夫よ。私はここを出たら、まっすぐ帰って自分の部屋でゆっくり休むわ」
険しい表情ではなく笑顔を作ろうと意識した。
「うん、それがいい。今日は早く帰って、たっぷり休むのが一番だ」
孝一は重荷から解放されて清々しているのだろう。
オレンジジュースを飲む孝一の表情が晴れやかに見えた。
食べ終えた食器が片付けられ、あとはコーヒーを飲むだけ。
いよいよ芝居の始まりだ。
柔和な表情でコーヒーに口を付ける孝一を見つめ、私は本題を切り出した。
「孝一さん、今まで本当にありがとう。私は孝一さんと付き合えて良かったと思ってる。もう本当にお別れだけど、孝一さんの幸せは願ってるから」
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