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孝一は黙ったまま不安の混じった目で私を見つめている。
話が長引くのを避けたい顔だった。
できれば、もう解放されたいのだろう。
朝食を食べ終えた今、さっさと一人になりたいのだろう。
だから「どうしたの?」などと積極的に尋ねてこないのだ。
それでも私は言葉を続けた。
「このまま自分だけの胸にしまって別れるつもりだったけど……やっぱり、それはできない。最後に聞いてくれる?」
「……うん」
孝一の顔に緊張が走った。
私が今さら何を言い出すのか、不安と戸惑いを感じているのだろう。
私は深呼吸したあと、勝負の一言を発する。
「孝一さんの赤ちゃん、産みたかったな」
孝一の身体が動揺したように震えた。
「それって、まさか……」
私は孝一の言葉に答えず、悲しみの表情を浮かべたまま。
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