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「ごめん、留美……」
私は俯いたまま黙っている。
「僕はまだ父親になる覚悟なんて持てないよ」
私は消え入りそうな小声で「うん」と答えた。
「だから今回は本当に申し訳ないんだけれど……」
「そう言われると思ってたわ」
孝一は必死に言葉を加える。
「もちろん費用は僕が出すし、病院にも一緒に行くよ」
私は自嘲的な笑みを浮かべて言う。
「ううん、その必要はないわ」
「いや、そのくらいはさせて欲しい。僕にも責任があるんだから」
強く主張する孝一の顔を、私はまじまじと見つめる。
――やっぱり、この男の優しさは中途半端だ。
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