拒絶される留美

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本当に優しい男なら、私の意志も聞いてくれる筈だし、産むという可能性も選択肢に入れるだろう。 たとえ別れたいと思った女であっても。 本物の優しさがあれば、子供の命だって考えるだろう。 産まないという結論を即断できないと思う。 もっと迷い、深く悩むだろう。 だけど孝一は少しの迷いも見せなかった。 彼は自分の都合や保身のことしか頭にないのだ。 そのくせ費用を出すとか病院に付き添うとか、中途半端な優しさは示す。 孝一の本性がはっきりと分かった今、私は迷わず芝居を続ける。 「本当にその必要はないの。もう全部、終わったことだから」 「えっ?」 孝一の表情はさらなる驚きで固まっている。 「最後に打ち明けちゃってごめんなさい。でもやっぱり、孝一さんにも知って欲しくなって。私の我儘ね」 「どういうこと? 全部終わったって……留美は何が言いたいの?」 「だから、もうすでに孝一さんの望み通りになってるから。私、そうしたから」
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