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私はその言葉に満足して、さらに言い続ける。
「私、本当は産みたかった。大好きな孝一さんの子供だから」
「留美……本当にごめん」
「私の方こそ、ごめんなさい。今までありがとう。こんな私と付き合ってくれて」
言った後、私は下を向いた。
また涙が溢れてきそうで、俯いたまま必死にこらえた。
芝居にもかかわらず本気で泣きそうになったり感情が入ってしまうのは、やっぱり彼を好きだったから。
付き合っていた時の幸せで温かい時間までも思い出し、本物の涙が流れそうになるのだ。
「私は、もう行くね。さようなら。今まで本当にありがとう」
椅子から立ち上がろうとした私を孝一は制した。
「待って!」
孝一の小さな叫びで、私は立ち上がりかけた腰を下ろす。
「僕は留美を誤解してたよ」
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