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私は気だるそうに立ち上がってバスルームへ向かう。
心配して見守る孝一の視線を感じたけれど、彼は何も言わなかった。
熱めのシャワーを浴びながら、私は徐々に緊張し始めた。
ここまでは私の思惑通りに上手く進んだけれど……
それは孝一の優しさからくるものだ。
一緒に泊まってくれたのは、単に私の体調を心配したからにすぎない。
恋心とか異性としての欲望なんかじゃなく、弱い者を守る保護者のような感情。
その感情を変化させることは出来るの?
もう一度、私のことを女として意識させ、別れたい気持ちを覆させられるのか――?
自信と不安は半々だった。
私は丁寧に髪や身体を洗い、バスタオルで拭いたあとコロンも付ける。
浴衣を着てバスルームから出ると、孝一はベッドの上に座って携帯を見ていた。
私は黙ったまま静かに孝一へと近寄っていく。
私の存在に気づいた孝一が、携帯画面から顔を上げて尋ねた。
「具合はどう?」
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