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「ありがとう。おやすみなさい」
孝一の対応には隙がなかった。
失望の溜息はドライヤーの音にかき消される。
どうしよう……。
こうなってしまったら、私が大胆な行動に出ない限り、状況は変わらない。
髪を乾かし終えた私は、いったん自分のベッドの中に入った。
隣りのベッドをそっと見ると、孝一は私のベッドに背を向けている。
もう眠ってしまったのか、まだ起きているのか、まったく分からない。
私の位置からは、孝一の後頭部しか見えない。
「孝一さん」
私は小声で呼んでみた。
返事はない。
本当に眠ってしまったのか、寝たフリをしているのか。
「孝一さん……もう寝ちゃった?」
さっきより少しだけ大きな声で、もう一度声をかけてみた。
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