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店員さんに案内された席は、奥の角で落ち着けそうだった。
孝一はビール、私はウーロン茶を頼んで静かに飲み始める。
「乾杯」ではなく、お互い「いただきます」と小さく呟いただけ。
孝一の表情は沈んでいて、明るい乾杯の雰囲気とはほど遠い。
二人とも食欲がなかったので、食べ物はオリジナルサラダとお刺身だけにした。
注文の品が運ばれてきた後、私は気になっていた本題を切り出す。
「どうして留美と一緒だったの? 別れるのはやめたの?」
「別れるつもりだったよ。でも、いろいろアクシデントが重なってしまって」
「アクシデント?」
私はオウム返しのように聞き返す。
「昨夜は留美の体調が悪くなって……帰るに帰れず、泊まったんだ」
「そう……」
孝一と留美が泊まることになった経緯や理由を聞き、私は少しホッとした。
孝一が自分から望んで泊まったわけじゃないと知って。
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