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「最後のデートだったなら、これでもう留美とは別れるのよね?」
「……」
孝一は沈痛な面持ちで黙っている。
――なぜ黙ってるの?! 留美に頼まれて渋々応じた最後のデートだったんでしょ?
「まさか……一緒に泊まって気が変わったの?」
「いや、そうじゃないんだ」
「こんなこと聞くのは踏み込み過ぎだと分かってるんだけど……一緒に泊まっただけで、何もなかったのよね?」
「当たり前だよ。僕にはそんなつもり、まったくなかったし」
「そうよね。変なこと聞いて、ごめんなさい」
私は深く安堵しながら謝った。
良かった、孝一の気が変わった訳じゃないんだ、と思った。
私はもう一度、確認するように尋ねる。
「それなら留美とは完全に終わったのよね……?」
孝一は泣きそうな顔で俯き、何も答えない。
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