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黙ったままの孝一を見ていると、私の不安はいっそう強くなる。
嫌な胸騒ぎがした。
「何があったの? 会社で気まずいとか……そういうこと?」
「いや、会社のことはもういいんだ。噂になろうが自分さえ気にしなきゃいいんだから」
「じゃあ、どうしたの?」
孝一は少しためらった後、決心したように口を開く。
「僕も今日、知ったばかりで動揺してるんだ……」
私は続きが気になり、話の先を促すように「うん」と相槌を打つ。
孝一は一体、何を知ったというのか。
「ごめん。やっぱり今は話せない。僕と留美の個人的なことだから」
孝一は申し訳なさそうに言ってビールを飲む。
「わかった……。気になるけど無理には聞かないわ」
孝一の様子から何か大きな事があったのは確かだ。
孝一と留美との間に。
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