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自分が動揺したのを悟られないように、フォークを強く握ってパスタを巻く。
「発表はほんの数日前。明日はラジオ局に呼ばれてるわ」
「沙織、凄いのね……」
「ほんと。これからどんどん活躍して、私とは違う世界へ行っちゃう気がする」
遥子の苦笑いは悔しそうにも淋しそうにも見えた。
沙織の栄光を100%喜んでいるわけではなさそうだ。
「私のことは沙織から聞いてる?」
二人ともパスタを食べ終わり、コーヒーを飲み始めた時、思い切って質問してみた。
遥子は返事に困ったようで、聞き取りにくいほど小さな声で答える。
「うん……」
「どこまで知ってるの?」
「孝一さんのことなら大体は聞いてる」
コーヒーをゆっくりと飲み、カップをソーサーに置きながら、自分でも驚くほど優しい声で尋ねる。
「聞いて遥子はどう思った? 私のこと、最低だと思ってる?」
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