留美の独占欲

9/18
前へ
/37ページ
次へ
「だったら奪えばいいのに」 「だからそれは無理なんだって! 相手の気持ちだってあるし、子供もいる家庭を壊して誰かを不幸にするのは嫌だわ」 遥子はイライラした口調で吐き出すように言った。 「遥子はホント平和主義ね。自分の家庭はあっさり奪われても、他人の家庭は奪えないなんて」 「私のことバカにしてるの?」 「違うわよ。私とは違うなぁって感じてるだけ。どっちが正しいのか分からないし」 なだめるように穏やかな口調で言うと、遥子の表情から怒りや苛立ちが消えていく。 「ある意味、留美が羨ましい。そこまで自分の気持ちを貫けたら気持ちいいんでしょうね」 「ううん、苦しいわ。そこは遥子と同じ」 私たちの視線はぶつかり合い、同時にふっと笑う。 ようやく共通点を見つけた安心感に近い笑いだった。 落ち着きを取り戻した遥子が探るように尋ねてくる。 「それで今はどうなの? まだ孝一さんと会ったりしてるの?」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

272人が本棚に入れています
本棚に追加