272人が本棚に入れています
本棚に追加
自分だけのものにならないのなら、きっぱりと忘れてしまいたい。
私は豪ちゃんを忘れるべく、気を紛らわせる努力をしていた。
昨日は会社帰りにスポーツクラブの見学へ行き、申し込みの手続きもした。
今度の土曜日は結婚相談所のカウンセリングを予約している。
今すぐ結婚したいわけではないし、結婚相談所に入会するつもりもないけれど、話だけは聞いておこうと思った。
私は新しい経験を生活の中に取り入れることで、豪ちゃんを忘れようとしていた。
今までと変わらない日常では、どうしても豪ちゃんのことばかり考えてしまうから。
一昨日、沙織の受賞をお祝いをしながら、留美と会うことを提案した。
最初は反発していた沙織も、最後は納得したようで。
私が留美に声をかけ、もし留美が断らなかったら沙織も会う気になっていた。
女三人で会う場面を想像すると無性にワクワクした。
三角関係の当事者ではないから、自分は傷つくことなく好奇心が満たされる。
平凡な生活の中、刺激的なことがあればあるほど、豪ちゃんを思い出す時間は少なくて済んだ。
最初のコメントを投稿しよう!