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「孝一さんの気持ちは本人じゃなきゃ分からないけど……やっぱり私と離れるのは辛くなったんじゃない?」
「そう……」
狐につままれたみたいに遥子はぼんやりしている。
「自分でも驚いてるわ。一度は『別れたい』ってハッキリ言われたのに、やり直してくれるなんて」
「やり直したい、って言われたの?」
「それに近いことは言われたわ。今度の週末も会う約束してるし」
コーヒーを飲み終えた遥子は水を勢い良く飲み、グラスの水は一気に半分近く減った。
「そうだったんだ……。じゃあ沙織は完全に諦めた方がいいのね」
「沙織のことは何も言えないわ。沙織の気持ちだから」
「沙織が知ったら苦しむだろうな……」
「私だってずっと苦しかったのよ。沙織と違って私には恋しかないんだもの。どうしても孝一さんを失いたくなかった」
遥子は残りの水を全部飲むと私に尋ねた。
「この話、沙織に教えてもいい? 実は私たちが会ってること、沙織は知ってるのよ」
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