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私はそう言って、さっさと二人分の料金を払って店を出た。
「留美、私も払うよ」
遥子は千円札2枚を差し出す。
私はそれを笑顔で拒否する。
「今日は私の話ばかりで、瑶子の事はほとんど聞けなかったし。だからご馳走させて」
「でも……」
「今度お茶でも奢ってくれればいいから」
私が押し切ると、遥子はためらいながらも「じゃあ、ありがとう」と言って、お札を財布に戻した。
新宿駅の改札で私たちは別れ、遥子は駅構内に入って行く。
私は構内には入らず、デパートでもブラブラしようと思って東口方面に歩き始めた。
一人で歩きながら、笑いが込み上げてくる。
私は満足感でいっぱいだった。
昨夜の孝一の態度にも、今日の遥子との会話にも。
私が孝一についた嘘は、予想をはるかに上回る効果を発揮していた。
遥子に伝えた通り、私と孝一は再び会うようになっていたのだ。
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