沙織の心が壊れた時

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「本当ですか? ありがとうございます!」 私は15分ほど前に名刺を渡された後藤さんに向って深く頭を下げた。 後藤さんは30代後半に見える男性で、やや目尻の下がった細い目からも温和な雰囲気が滲み出ていた。 その後藤さんはラジオドラマ番組のプロデューサー。 そして、来年4月から始まる30分のドラマシナリオを書くライターの一人として、私の起用も考えてくれたのだ。 私は喜びと興奮で身体が震えそうになる。 「単発の恋愛ドラマだから、谷本さんにも1本は書いてもらうよ。好評だったら追加するから」 「はい!」 「じゃあ企画書とシナリオ、今月中に書ける?」 今月中だと、あと二週間弱だ。 書けるのかどうか不安だが、ここでマイナス発言などする訳がない。 「書きます! 30分ドラマでしたら、シナリオの枚数は原稿用紙30枚で良いのでしょうか?」 「そうだね、多めでも構わないよ。あとで削ることはできるから」 「分かりました」  
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