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「沙織、もう食べないの?」
「遥子は気にしないで食べてて」
私は遥子の方を振り向かず、背中を向けたまま答えた。
遥子は申し訳なさそうに沈んだ声で言う。
「ごめん、食事が終わってから話すべきだったね」
それには答えず、冷蔵庫から缶ビールを2本持って部屋に戻った。
「遥子も飲む?」
「ううん、今はこっちでいい」
遥子はミネラルウォーターの入ったグラスを指した。
私はプルトップを開け、ビールを喉に流し込む。
そんな私を遥子は困ったように見つめていた。
「飲み過ぎないでね。明日はラジオ局に行くんでしょ?」
「心配しないで、1本飲むだけだから。明日は二日酔いなんて絶対ダメだから」
「そうそう! 凄く大事な日だもんね」
遥子は作り笑顔と明るい声で、沈んだ場の空気を変えようとしていた。
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