255人が本棚に入れています
本棚に追加
ドアが閉まって一人になると、部屋の中がさっきまでより寒く感じた。
自分から望んで遥子に出て行ってもらったくせに、不安が押し寄せて来た。
「やっぱり電話は止める」と言って、遥子を呼び戻したい気にさえなる。
そんな逡巡を振り切るように、私は孝一の電話番号を押した。
呼び出し音が鳴っている間、胸の高鳴りはどんどん激しくなる。
今日は電話に出なくていい……とさえ思った。
いざその場になると悪い方へ想像が働き、はっきりさせることが恐くなったのだ。
「もしもし」
孝一の低い声が耳に響いた。
聞き慣れている普段の声とは違って、低く沈んだ声。
私は努めて明るい声を出す。
「こんばんは。今、話しても大丈夫?」
孝一は短く「うん」とだけ答えた。
嫌な予感がした。
本当に最悪な結果が待っているような気がして、留美との事を聞くのが恐い。
最初のコメントを投稿しよう!