沙織の心が壊れた時

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「あのね、聞きたい事があるんだけど……」 そこまで言ったあと、私は言葉が出なくなった。 気まずい沈黙を破るように、孝一が声をかけてくる。 「メールでは伝えたけどさ、受賞おめでとう。直接お祝いの言葉も言えてなくてごめん」 「ううん、返信もらって嬉しかったわ」 「約束通り会ってお祝いもしたいけど、なんていうか、いろいろあって……」 孝一は申し訳なさそうに、続く言葉を濁す。 私は自分の気持ちをぶつけた。 「しばらくは忙しい、って孝一のメールにあったから、待つつもりだったの……。でも、どうしても聞きたい事があって待てなかった」 一気に言ったあと、大きく深呼吸する。 孝一は再び「うん」とだけ返し、私と同じように緊張しているのが伝わってきた。 「留美とはその後、どうなったの?」 単刀直入に「留美とヨリを戻したって本当なの?」とは聞けなかった。
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