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答えを聞くのが恐くて不安で、無意識のうちに曖昧な言葉を選んでしまう。
孝一はなかなか言葉を発しない。
沈黙がやけに長く重く感じる。
その沈黙だけで絶望的な気持ちになったけれど、まだ一縷の望みを捨てられなかった。
「沙織にはきちんと話すべきだよね」
孝一が覚悟したように言った。
最初に耳にした沈痛な声ではなく、覚悟を決めた口調に変わっていた。
「できるなら、そうして欲しい。今まで相談に乗ってきたのに、急に壁を作られて、正直すごく落ち込んだわ」
「ごめん。自分でも酷いと思ってる。だから、ちゃんと話すよ。沙織には話すべきだと思った」
「ありがとう。そう思ってくれたなら嬉しい」
孝一が話そうとしている内容はともかく、全部を話す気持ちになっただけでも少し救われた。
自分が相談したい時だけ寄って来て、いざ必要なくなったら避けるなんて悲しいから。
好きになった人が、そんな人間だったら哀し過ぎるから。
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