留美の心が崩れる時

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孝一との付き合いが復活して、私は幸福感に満たされていた。 「留美とやり直したい」と言ってくれた一週間後、孝一は私の部屋に泊まった。 食事をしてキスをして、一つのベッドで一緒に眠って。 私を抱く時の孝一は、恐る恐る神聖な儀式を行うような接し方だった。 そこには欲望や快楽など存在していない、とさえ感じた。 孝一が満足したのか不安も感じたけれど、時間をかけて良い関係を築こうと思っていた。 ◆ ◆ ◆ 12月に入ったばかりの夜、遥子から電話があった。 入浴後の肌に、潤いたっぷりの乳液を塗っている時だった。 私はベタついた指先を慌ててティッシュで拭き取り、携帯の通話ボタンを押す。 「はい、もしもし」 「こんばんは、瑶子です。今、話して平気?」 「大丈夫よ」 「一人? 孝一さんと一緒かな?」 「一人よ。会うのは週末だから」
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