留美の気持ち

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孝一と二人だけ残されたラウンジで、私はどうしたら良いのか途方に暮れていた。 穴があったら入りたい恥ずかしさ。 私は自分の嘘を認める態度を見せてしまった。 今さら何を言ったところで、孝一に信じてもらうのは無理だろう。 私は沈黙を続けたまま、孝一の方から何か言い出すのを待っていた。 「……驚いたよ」 あまり感情のこもらない声で孝一が言った。 その一言が私の胸を締めつける。 重たい沈黙が私たちに圧しかかっていた。 その空気に耐えかねたように、孝一が尋ねてくる。 「遥子さんが言ったことは、本当に事実なの?」 私はゆっくりと無言で頷く。 「そうか……事実か……」
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