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孝一は放心したように言い、再び黙ってしまう。
「ごめんなさい。孝一さんを失いたくない一心で……失うなんて考えられなくて……。どんな手を使ってでも、あなたを繋ぎ止めようとしてたの」
「……」
「孝一さんが『やり直そう』って言ってくれた時は、本当に嬉しくて……。言葉にできないくらい、感謝の気持ちでいっぱいだったわ」
孝一は無言のまま、苦渋の表情で聞いている。
「私を選んでくれたこと、絶対に後悔させないように努力するつもりだった。一生をかけて頑張るつもりだったの」
表情は変えずに首を横に振る孝一。
「そんなふうに言われても、今の僕には……」
孝一はそこで言葉が詰まった。
私は小さく頷く。
「そうよね。当然よね」
もう取り返しがつかないのだと、私は悟った。
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