留美の気持ち

5/9
前へ
/9ページ
次へ
「ほんと気を遣わないで。嫌われて軽蔑されて当然だもの」 「留美をここまで追い詰めた僕にも責任はあるから」 心の底から泣けてきた。 一緒に悪者になろうとしてくれる孝一の言葉が身に沁みて。 「優しいのね。私のこと、怒ってないの? 許してくれるの?」 無理だとは悟っていたが、ほんの僅かだけ期待してしまう。 孝一と別れずに済むことを。 孝一は悲しそうな目をして言う。 「僕に怒る資格はないよ。元はと言えば、留美と沙織の間で揺れた僕が悪いんだから。僕は留美も沙織も苦しめた……」 本当に孝一の反応は意外だった。 一方的に責められたり、呆れられると覚悟していたから。 孝一の思いやりで、私の深い自己嫌悪は救われていた。 「じゃあ、送ってもらおうかな……。ほんとに孝一さんがいいのなら」 私は少し甘えを含んだ声で言った。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加